生涯好きな人

「……ですね!もちろんです!準備しますね」
壁越しに誰かと電話しているのが聞こえて目が覚めた。
良かった。あれは夢だったのか。
そう思うと、荒れていた呼吸が少し収まった。
口で呼吸していたからか、喉がカラカラだ。
布団から出て降りていくと、可愛い格好をした初が鏡を見て前髪を梳かしていた。
「どっか行くの?」
さっきの電話の内容からして、戸亀とか鮎川とかと遊びに行くんだろう。
「はい!伸太郎くんとショッピングモールへ行ってきます」
出てきた名前は戸亀でも鮎川でも星出でもない、あいつ。
「……そっ、か。気をつけて」
「?はい!行ってきます」
玄関へ歩いていったかと思うと、初はパタパタと走って戻ってきた。
「紺くん寝癖可愛いですね!大好きです!」
頬を赤くしてそう言うと、行ってきますと部屋を出ていってしまった。
なんで七海とデートなんかするんだよ。
なんで別れる俺に大好きなんて言うんだよ。
好きで、好きでたまらなくなる。
離れられなくなる。
別れを切り出されるのは、もうすぐそこだろうって分かっているのに。
俺の胸に残り続ける初は、離れようとしてくれない。