生涯好きな人

「初!」
街中を歩いていると、背伸びをした初が見えた。
名前を呼んでも初はこっちを向かない。
走って駆け寄ると、見たくない光景が目に入った。
キスをしていた。
大好きな、未来のお嫁さんでもある彼女の初と、あいつ……七海伸太郎が。
「初?」
俺が何度名前を呼んでも振り返らない。
車の音も風の音もない静かな空間なのに、まるで別世界にいて聞こえていないようだった。
「行こっか、初」
「うん!伸太郎くん大好き」
タメ口で話していた。躊躇することなく、腕を絡ませた。
付き合って2年経つ俺にはまだ敬語なのに、知り合って1年ちょっとの友達には、新しい恋人にはタメ口なのか。
「初、初!」
この距離なのに、聞こえない。
2人の声は聞こえるのに、俺の声は届かない。
何度呼びかけても振り返らない初に、俺の追いかける足はついに止まった。
腕を組んだ2人は、もう見えないところまで行ってしまっていた。