「じゃあ僕達はここで。初ちゃん、鮫上くん、またね」
初のおばさんとその彼氏さんはここに泊まる前に行くところがあるらしい。
解散寸前で飛び込んで行ったから、まだ食べるんだけどどうしようとか、そんな風にならなくて良かった。
「紺くん、どうしてここに?」
部屋へ行くために乗ったエレベーターの中。
2人きりで今すぐに抱きしめたい気持ちをグッとこらえる。
「どうしてもすぐに会いたかった。初を傷つけたこと、謝りたかった」
話し始めると、ポーンと到着した合図が聞こえる。
「お部屋行きましょう」
パタパタと俺の前を小走りする初の後を追いかけて部屋に入る。
「俺、七海と初が付き合ってるって思ってショックで、初のこと避けてた」
聞きますよ、とでも言うように優しい目線を俺に送ってくれたから、それにつられて自然と言葉が出てくる。
「そっっ!そんな訳ないじゃないですか!私は紺くん一筋です!!」
泣きそうな目で必死に伝えてくれるその姿がものすごく愛おしい。
「七海から聞いたんだ。初に背中押してもらったって。その時の会話、偶然聞こえて勘違いしてた」
そんなわけないのに、聞くことが怖くて決めつけていた。
「そうだったんですね。ごめんなさい、紛らわしい言い方になってしまって」
「いや全然……」
「でもよかったです、紺くんに他に好きな人ができたわけじゃなくて……」
ほっとした顔で俺の手を取った。
俺が初以外の人を好きになるわけない。
それは初も同じだった。
「安心してください。私が好きなのは後にも先にも紺くんだけですから」
優しい笑顔を向けてそう言う初に、思わずキスをした。
「俺もこの先ずっと初だけだから。好きだよ」
「私も紺くんのこと大好きです!」
お互いがお互いに吸い込まれるように、自然と長い長いキスをした。