生涯好きな人

電車を乗り継いで、走って走って、やっとたどり着いた思い出のあるホテル。
顔合わせならあのビュッフェを食べた食事会場だろう。
スタッフさんに聞かれる何名様ですか?を連れがいるのでって通してもらった。
どこだ、どこにいる?
どこを見ても初らしい人は見当たらない。
奥へ奥へと足を進めて、周りを見渡す。
「じゃあ初ちゃんもここに泊まるんだ」
「はい!」
大好きな人の名前。大好きな声。
振り向くと、見知らぬ男女とオシャレをした初がいた。
「初っ!」
俺が名前を呼ぶと、驚いた顔をしてこっちを見た。
「え、紺くん!?」
なんで……と聞かれるも、答えるより先に体が動いた。
「ごめん、ほんとにごめん」
背中に回した腕を受け入れてくれたのか、初の腕が背中に回る。
「寂しかったです……。でも今はちょっと……」
そう言われてハッとした。
そうだ、今は大事な顔合わせ。
公衆の面前でハグをしてしまったことに恥ずかしさが込み上げてくる。
「あとで、話せる?」
「それはもちろんですけど……」
「じゃあ、外で待ってる」
俺が言うと、待ってというように俺の手を取った。
「あの、この人が私の彼氏……じゃなくて婚約者の紺くんです」
緊張気味にそう言うと、ぎゅっと手を握る力が強くなる。
「あ、えと、鮫上紺です。初……倉下さんとは結婚を前提にお付き合いさせていただいていて、秋には結婚しようと思っています」
もう手放さない。
初の中だけじゃなくて、自分の中でも初の自慢の彼氏でいられるように。
初のことが何よりも大切で、愛おしいから。