初めて初とは別々で寮へ戻った。
目撃したのが放課後で本当に良かったと思う。
初と今、まともに顔を合わせられる気がしない。
初が俺から離れるわけない。
そう思っていたけど、思い返してみると自分から離れていくであろう要素がないとはいえない。
愛情表現は初からがほとんどだし、照れもドキドキも、顔には出さない。
気付かぬうちに不安になって、ピークを通り越して、冷めてしまったなんて有り得ないとはいえない話だ。
それも相まっていつ別れを切り出されるのかという不安が、夕方までの幸せな時間を飲み込んでしまう。
"紺くん!大好きです!"
"行ってきますのハグ、しませんか?"
"紺くんのことが好きすぎて毎日幸せです!"
思い出される愛にまみれた言葉さえも、偽りだったのかと思うと心にナイフが突き刺さるようだ。
「ただいま!紺くん紺くん!」
楽しそうに俺の方へ寄ってくる初も、いつもは愛おしくて仕方ないのに今は見ているだけで苦しい。
今から何言われるんだろう。
七海と付き合うことになったから婚約とペアを解消したいです、とか?
紺くんのこともう好きじゃないですとか?
あー、ダメだダメだ。
今初と話せない。
「ごめん、今日ちょっと体調悪いから今度ね」
「え……。大丈夫ですか?」
声色から本気で俺の事を心配してくれているのは分かる。
でもそれは、恋人として?それとも、元彼、もしくは友人として……?
「大丈夫、寝不足だから。おやすみ」
初の顔なんて見ることも出来ずに、そのまま自分の部屋に引きこもった。