生涯好きな人

初が学校を休んでおばさんのところへ行った。
おばさんの彼氏さんとの顔合わせが今日の昼間じゃないと出来なくてやむを得ず休んだらしい。
らしい、というのは、このことは鮎川に聞いたから。
「なんで彼氏なのに聞かされてないのぉ?」
それは……。
きっと七海は聞かされているんだろう。
昨日は初とデートへ出かけていたあいつ。
「おはよう!あれ、ヘラヘラ、初は?」
あれ、こいつ知らない……?
「おばさんの彼氏さんと顔合わせだって」
「そうなんだ。じゃあ今日休み?」
「おやすみだってぇ」
寂しいねってみんなが話している。
やっぱりみんなに愛されてるな、初は。
だから宇貝も七海も好きになるのか。
「そういえば、ヘラヘラと初って喧嘩してんの?」
「喧嘩っていうか……他に好きな人出来たんだろ、初」
それでそれは、お前だろ、七海。
「え、嘘、初ちゃんに限ってそんなことないでしょ」
星出が有り得ないってハッキリわかる表情で言うけど。
告白現場を見てしまった以上、これは本当のことだって認めるを得ない。
「見たんだよ、初が告白してるところ」
"大好きですよ!伸太郎くんのこと"
この言葉が頭からずっと離れない。
思い出す度に心が痛んで仕方ない。
「え、誰に?」
だから、さっきから分かってんだろ。
「お前だよ、お前!七海!」
ついに声を荒らげてしまった。
大好きな初を取られたのが、我慢できなかった。
それもこれも、初を幸せにできていなかった自分のせいって分かっているけど。
「はぁ!?いやいや、そんな訳ないだろ!」
「そうだよ!それはないよ」
全力否定する七海とそれを支持する梶。
「なんでそんなことになってんの」
俺と七海の間に入った星出が言った。
「初が七海に告白してるの聞いたんだよ。俺もって言ってただろ、お前も」
「ちょっと!落ち着いて」
どうどうと馬を落ち着かせるように椅子に座らされたタイミングで予鈴が鳴った。
「この話はまた後で。授業終わったらすぐ来るから」
梶にそう言われて、結局俺はイライラと喪失感を感じながら授業を受けた。