俺が、好きになっちゃダメ?


今日は、いよいよ退院の日だ。

お医者さんからの最終診察と健康チェックを行ったところ、わたしはこれまで通りの生活をしても問題ないことを言われ、荷物の整理をして退院の手続きをした。


病院まで迎えに来て、入院費を払ってくれたお母さんと一緒に、お医者さんと看護師さんに最後の挨拶をしてから病院に出ると、冬の青空が病院の窓からよりもずっと爽やかで綺麗に見えた。


家に帰ると、女の人がリビングにいた。



「雫ちゃん、久しぶりね」



その女の人が、わたしに笑いかけてきた。



「雫、覚えてる? この方」



眉毛をきちんと整えていて、耳の辺りで切り揃えた綺麗な髪の毛の人。

お母さんが、手のひらを天井に向けて5本の指をその女の人に向けながらわたしに聞いたけれど、覚えていない訳がない。



「……玲の、お母さん」



わたしがそう言うと、その女の人は大きく頷いた。



「そうよ! 雫ちゃん、すっごく綺麗になったのね!」



やっぱり、そうだ。

この人は、玲のお母さん。いつ見ても、玲にそっくりな目をしている。



「雫ちゃん。お母さんから聞いたけど……本当に、無事でよかったわ……」



あのこと、もう玲のお母さんにまで知られているんだ。



「雫ちゃんまでいなくなってしまったら、私、どうしようかと思ったの……」



玲のお母さんは、自分の手を胸に当てた。



「不思議とあの時のことが蘇ってきたのよ……。玲が自ら命を絶った時……私、どうして玲の苦しみと自分の命を交換できなかったんだろうって、そんなことばっかり考えたわ」



苦しそうに話す玲のお母さんを見て、わたしも胸が締め付けられた。