「あの時、わたしは木嶋先輩に告白しました。でも、ダメだったんです。知っていましたけどね」
美雪ちゃんは、悲しそうに微笑みながら続ける。
「『好きな人がいるから、無理なんだ』って。好きな人、なんてはぐらかしてたけど、毛利先輩のことだってすぐ分かったんです」
「美雪ちゃん……」
「成り行きで知ったことがあるんです。毛利先輩は、大切な人を亡くしたことがあるって」
わたしは、美雪ちゃんの言葉に小さく頷いた。
「毛利先輩には、わたし、完敗ですよ。ここまで自分の身近な人を大切にできるなんて。わたしは、身近な人を大切にしなきゃいけないのは分かってるけれど……でも、先輩みたいにそれを行動で表せない」
美雪ちゃんにそう言われて、わたしは恥ずかしくてしょうがなくなった。
「ううん……。わたし、ちっとも美雪ちゃんが思っているような人じゃないよ。こんなふうに自分の命を粗末にして、両親にも親友の夏芽にも、悲しい思いをさせて」
「わたしは、毛利先輩ほどつらい経験があるわけじゃないからこんなこと言うべきじゃないと思うけれど。毛利先輩は、人の幸せや不幸を自分のことのように捉えて、一生懸命でたくさん頑張れる人なんです。先輩は謙虚だから自覚できないかもしれないけれど、きっと木嶋先輩だってそう思ってますよ。だとしたら、きっと木嶋先輩だって毛利先輩を好きになってません」
キラキラした目を、わたしにまっすぐと向ける美雪ちゃん。
口元は、綺麗な弧を描いている。



