「そう、だったんだ……」
「毛利」
木嶋くんは、真剣な眼差しでわたしの苗字を呼んだ。
「ん?」
「お前が、まだ自分の亡くなった彼氏を愛してるのを承知で聞くんだけど」
木嶋くんは、間を置いた。
「……俺が、好きになっちゃダメ?」
わたしは、思わずパチパチと瞬きを繰り返した。
「俺が、毛利を好きになっちゃダメか?」
立ち上げようとしても立ち上がらないパソコンのように、わたしの頭が働かなくて、どう答えていいのかも分からなくて。
わたしはただただ、木嶋くんの二つの目を見続けているしかなかった。
「……えっとね」
なんとか黙ったままでいないようにしようと言葉を紡ごうとするも、木嶋くんの次の言葉で遮られた。
「いいんだ。無理して答えようとしなくて。俺は、言いたかっただけだし」
木嶋くんはそう言って、椅子から立ち上がり、バッグを持った。
「そんじゃ、退院までもう少しなんだろ? 体、大事にしろよ。……じゃ、また」
木嶋くんは、くるりと背を向けて、そのまま振り返ることもなく、病室から出て行った。
俺が、好きになっちゃダメ……?
俺が、毛利を好きになっちゃダメか……?
木嶋くんのいなくなった病室の中で、残されたのはベッドの上のわたしだけ。
そんなわたしの頭の中では、木嶋くんの口から出た言葉が、何度もこだまして、時間が過ぎていくばかりだった。



