「圭志ー? いつまでそんなとこ突っ立ってんの? 早く退かないと邪魔になるぞ!」
後ろから、なぎちゃんの声がした。
確かに、直原が呼び止めてきたのは廊下の真ん中あたりでみんなが通るところだ。
俺は、なぎちゃんの横に並んで一緒に帰ることにした。
「さっき、直原と何話してたんだ?」
「劇のこと。クオリティ高かったし、照明の当て方も完璧だったーとかなんとか」
「あぁー、直原はそういえば、『オズの魔法使い』の主人公のドロシー役やってたよな。結構演技上手かったし」
そうか、直原はそんな大役を務めていたのか。
俺はオズの魔法使いのストーリーも全然知らないし、他学年の劇とか興味ないから、そんなに頭に入ってこなかった。
「褒められたかったんじゃねーの?」
「そうかな」
「だって、直原ってやたらお前にベタベタしてるような気がするし」
確かに、直原は人懐っこいよ。
だけどだよ、それは俺にだけ懐いているといえば、そうは言い切れない。
俺と直原は四六時中、一緒にいるわけじゃないし、俺らの見ていないところで、別の奴と楽しく話している可能性だってゼロじゃない。
ああいう明るい性格の人間って、別に珍しいとも思わないな。



