久遠寺(くおんじ)玲。 わたし、毛利 雫(もうり しずく)の、初めての恋人。 わたしが住んでいる場所は、海しか見えないド田舎。 だから、季節問わず海に行こうと思えば徒歩ですぐ行ける。 『これ、雫にやる』 貝殻。 玲が見つけてくれた貝殻。 プレゼントしてくれた貝殻。 どの貝殻よりも、真っ白できらきらと光を受けている。 『ありがとうっ』 『耳に当ててみろよ』 玲の言葉で、真っ白で光り輝くその貝殻を耳に当てる。 ざぶん、ざぶん。 心地よい音が耳に飛び込む。 『うーん、いい音……!』