翌日、わたしは自習室を利用しようと、学校に入った。
「毛利先輩」
毛利……。
わたしのことだろうな、わたしの記憶が正しければ、毛利という名字はうちの学校には他にいないはずだ。
後ろを向くと、ゴクリと唾を飲んだ。
「毛利先輩、で合ってますよね?」
少しもじもじしながら、わたしの苗字を確認する彼女は、小さなポニーテールを揺らしている。
『木嶋せんぱーい!』
木嶋くんと同じ、サッカー部に入っている女の子だった。元気に木嶋くんを呼ぶ元気な時とは、雰囲気がかなり変わっているけれど、間違いなかった。
「はい、合ってますけど、どうかしましたか?」
「ごめんなさい、木嶋先輩と一緒にいるところを見てただけでしたので、下の名前が分からなくて、苗字でしか呼ぶことできなくて」
「あぁ、そういうことね。改めまして、毛利 雫といいます。木嶋くんが呼んでるとこ、わたしも見てたけど、あなたは直原さんだよね?」
「はい、わたし、直原 美雪です」
自己紹介しあうと、直原さん、もとい、美雪ちゃんは、ふんわりと笑ってくれた。
「わたしに、何か用があるの?」
「あぁ……用っていうか、ちょっと興味があったんですよね……」



