試合が終わり、木嶋くんは汗をキラキラと輝かせながらわたしの方へやってきた。
「毛利! 試合、見にきてくれて、ありがとな!」
「ううん、かっ……。すごかったよ!」
かっこよかった。そう言いたかったけれど、最初の文字で恥ずかしい気持ちが勝ってしまい、口が閉じてしまった。
「木嶋先輩、写真撮りますよー!」
……またあの子だ。
短いポニーテール が、夏の風になびいている。
どうして、話をしている時に2回も……。
……いやいや、サッカー部だっていろいろあるんだ。部員でもないわたしが、文句を言ったらダメなんだ。
わたしは、自分に言い聞かせて、木嶋くんに手を振った。
「あ……それじゃあね、お疲れ様」
「うん、じゃあな」
なんで、言いたいこともわたしは言えないんだろう。
タイミングも原因となっているから、仕方ないような気もするけれど、モヤモヤする。
まるで、何かしらの目に見えない悪魔がわたしの近くにいて、わざと心を重たくさせられているような気がした。



