朝起きると、勉強するための机の上には、昨日買ったばかりの紫のひよこのぬいぐるみが、ちょこんと乗っているのが目に入った。
楽しいヨーヨー釣り、綺麗な花火、木嶋くんの優しい笑顔。
どれも、昨日の美しい思い出は夢じゃなかったんだな。
お腹は空いていたけれど、目玉焼きの乗った食パンをいつもよりかじるスピードは遅かった。
「雫? どうかしたの?」
お母さんが不思議そうな顔で、わたしを見ている。
「ううん、なんでもない!」
わたしは、首を横に振って、トーストを食べ続けた。
朝食を済ませた後、部屋に戻るとスマホから着信メロディが流れているのがわかった。
慌ててスマホを手に取ると、画面には『木嶋くん』の文字が光っている。
「もしもし?」
『おはよう毛利』
「おはよ、木嶋くん」
『昨日の花火、楽しかったな』
「ふふ、そうだね」
『……俺さ。誰かと一緒に花火を見る、なんて事する予定は全然なかったから、びっくりしたけど、毛利がいてよかったなって、すっげー思ったんだよ』
ドキッと、わたしの胸の音が鳴き出した。
「わたしこそ。まさか、木嶋くんと一緒に花火を楽しめるなんて、思いもしなかった。一緒にいてくれて、ありがとね」
わたしの心に羽でも生えたのか、ふわふわと飛んでいるような思いだった。



