花火が打ち上がった。
紺色の空に、次々と大きな花が咲いては消えていく。
「綺麗……!」
「な? いい場所だろ?」
胡桃くんが、誇らしげにわたし達の顔を見た。
「確かに、そのあたりだけはでかしたと思うぞ。褒めてやる」
木嶋くんは、また意地悪く言った。
「お前に関しては、なんだその言い方は! そこは、”ありがとう“だろうが!」
両拳を腰に当てて、叫ぶ胡桃くん。
「「あはははははっ」」
わたしと夏芽は、また2人で一緒に声を立てて笑い、木嶋くんと胡桃くんも笑い出した。
笑い声が夜空にふわりと溶けていき、まるでそれが花火に姿を変えたように、パパパパパッと一気に打ち上がる。
木嶋くんの横顔。
いつも凛々しい木嶋くんの顔が、花火に照らされているせいか、やけに優しく見えた。
わたしが見ていることに気付いたのか、木嶋くんは優しく微笑んだ。
「いい思い出になったよな、毛利」
「うん……!」
くすぐったい気持ちが、コップから溢れるような思いをどうにか抑えようと、わたしは両拳を胸に当てた。



