「あっ! もうすぐ花火始まるんじゃね?」
わたしと夏芽がカラーひよこのぬいぐるみを買ったところで、胡桃くんが時計を見るなり顔をパッと明るくした。
「あ、ほんとだ」
緑のひよこのぬいぐるみを胸のあたりで抱えながら、夏芽が驚いたように目を見開かせた。
「じゃあ、みんなちょっと俺についてこいよ」
「なぎちゃん、花火よく見られるとこでも知ってんのかよ」
木嶋くんが、驚きを隠せないような表情をしている。
「そーそー、まあ騙されたと思って、こっちに来てくれって」
わたし達は、先にスタスタと歩いてしまった胡桃くんに小走りで追いかける。
「ちょっと木嶋くん、待ってー」
いつもと足元が違うから、余計に走りにくい。余計に浴衣だと、思うように歩幅も広がらないのだから、常に小走りで行かないといけないのはさすがにきつい。
「おいおい、なぎちゃん! 1回落ち着いて見てみろよ、毛利と梅本を。2人とも、浴衣着て下駄も履いてんだから走りにくいんだぞ」
木嶋くんが助け舟を出してくれた。
「おっと、これは気が利かなかったな、すまねぇ」
そう言って、胡桃くんは数歩戻ってきてくれた。
「もうちょい気遣いできないと、モテねぇぞ」
「なに〜? それは余計だろ!」
「え? 俺はほんとのこと言ったんだけど」
憎まれ口を叩き合っているけれど、どことなく2人とも楽しそうだ。
思わず、顔を見合わせてクスッと夏芽と一緒に笑ってしまった。



