俺が、好きになっちゃダメ?


明日香ちゃんと鮎川くんがやっていたように、ヨーヨー釣り対決をすることにしたものの、わたしも夏芽も、二つずつといった引き分けだった。

わたしが取ったのは、一つは紫の水風船にピンクと白の線。もう一つは、赤い水風船に白と水色の水玉模様。
夏芽のは、一つが水色の水風船にオレンジと黄色の線が描かれてあった。もう一つは、黄色の水風船に紫の水玉模様が描かれてある。

わたしは紫のヨーヨー、夏芽は水色のヨーヨーをもらうことにして、次の屋台を回ることにした。



「雫、なんだかんだ浴衣と合ってるね、そのヨーヨー」



夏芽に言われて、わたしは思わず浴衣とヨーヨーを交互に見て笑ってしまった。



「あは、確かに!」



……なんだかこれじゃあ、どんだけ紫が好きな人間なんだって周りから思われそうだよ、合ってるんだけどね。



「あれ? 毛利、梅本」



聞き取りやすい、低音ボイスがすっと耳に入ってきた。
横を見ると、射的の屋台のそばに木嶋くんが立っていたのだ。



「木嶋くん、来てたんだ」



「毛利は、確か家からここが近いんだよな。梅本も?」



わたしが言うと、木嶋くんは柔らかな声で返してくれる。


家からここが近いんだよな。
わたしの家がここら辺であることを覚えていてくれてたんだ。



「ううん、わたしは雫がここに来るって言うから、一緒にいるだけ」



「俺も、ここには来るんだよ。俺の近くにも、公園とかはあるんだけどさ。遊具が多くて、屋台は置けないから、夏祭りやってないんだ」



「そうだったんだぁ」



なんとなく、木嶋くんの家の近くの公園には夏祭りがやっていなくてよかった。
なんてことを考えてしまった。