ドキリとした。
わたしはこの2人の名前を知らないのに、向こうはわたしの名前を知っているだなんて。
「マリナ、どういうこと?」
「イオリ、覚えてないの? あいつ言ってたじゃん。遠距離恋愛の雫って名前の彼女がいるって」
「言ってたような、言ってないような……」
男の子がそう言いながら首を傾げたと同時に、わたしは、眉をきゅっと眉間に寄せた。
「はい。毛利 雫、です」
「あぁ、やっぱりか! まさかあいつと付き合ってたっていうお前とこんな風に会うとはねー。もしかして、そっちも修学旅行? 偶然だなぁ」
まるで、前から友達だったかのような口調で言う男の子。
「そっか、あんたが久遠寺と付き合ってたんだ、でも実際あんたもこうなってせいせいしたんじゃない?」
「あいつはねー、マジとろくさくてさー」
わたしが今どんな顔をしているのかまるで分かったいないかのように、2人はヘラヘラと笑いながら会話し続ける。
「確かに、あんたの彼氏殺したっていうことだけ切り取ったら、悪いことしちゃったなあって思ったけどさぁ」
「あいつは、さすがにねー」
「あんたも、新しい彼氏作ったほうがいいって!」
「そ! 形あるものはいつかなくなる、人だっていつか死ぬからね」
黙って聞いていれば好き放題に言っている2人を見て、わたしの心の中からふつふつと怒りが噴き出てきた。
負けない、負けたくない。
負けるな、わたし。
氷を叩き割るように、わたしは歯向かって行った。
「人1人の命を奪っといて、なんであんた達はそんなのうのうと生きてられんの!?」
「……は?」



