今年も夏がやってきた。
眩しい太陽が浮かぶ空の下には、白い砂浜と真っ青な海が広がっている。
ざぶんざぶん、と寄せては返す波が、心地よく脚をくすぐってくる。
「わぁー、可愛いー!」
麦わら帽子をかぶった、ボブヘアの女の子が花柄の赤い水着についているフリルを揺らしながら近づいてきた。
女の子は案の定、わたしが抱いている赤ちゃんを見ていた。
「1人でどっか行くなよ、何やってんの」
女の子よりも、少し背の高い男の子がやってきた。足がスラリと長く、まるでスポーツ選手みたいな男の子だった。
「ほら見て、赤ちゃんだよ」
「こんにちは」
わたしは、2人に笑いかけた。
「こんにちは」
隣に座っていた圭志も、一緒に声をかける。
「こんにちは! 赤ちゃん、なんて名前なんですか?」
「彩っていうの」
「彩ちゃーん!」
そう、わたしが抱いている赤ちゃんの名前は彩。木嶋 彩。
半年前に、わたしと圭志の間に産まれた子だ。
玲がこの世を去り、闇色の世界となったわたしの世界を圭志は彩ってくれた。その圭志と結婚し、娘が産まれたことでわたしの人生はさらに彩られた思いだったことから、わたしがつけた名前なのだ。
圭志と彩。
今は、2人がわたしの人生を彩ってくれている。



