「何もしないで、終わりにしないでください……」
わたしは、できる限り声を振り絞った。
「直原……なんで」
「木嶋先輩が幸せになる道へ、近づいてほしいから、なんです」
幸せにはなってほしいけれど、わたしはもう先輩とはその場で目を合わせられなかった。
それは、木嶋先輩が幸せになるということは、わたしが苦しくなるということを知っていたから。
でも、どうしてなんだろう。
今まで、木嶋先輩の笑顔は、わたしの幸せだったというのに、もうそうではなくなった。
「木嶋先輩の本当の気持ち、毛利先輩に届けてほしいんです! だって、好きな人だから……。好きな人の幸せは、わたしの幸せだから……!」
知らない間にわたしの背中は、まだ動揺しているであろう木嶋先輩に向けて、そのまま足は一直線へと向かった。
「わたしの方が、知ってるのに……」
もう、木嶋先輩の姿は見えない。
毛利先輩よりも、わたしの方が部活で頑張る木嶋先輩をずっと見てきた。
汗をキラキラと輝かせる木嶋先輩に、どれだけ心を奪われたか、きっとそれは、誰も知らないだろうな。
これから先、木嶋先輩を見て、わたしは何度苦しくなるんだろう。
「……お幸せに、先輩」
わたしは、そう呟いて、片思いの幕を閉じた。



