「まあ、俺も無理だろうと思ってはいるんだけどさ」
先輩は、切なそうにつぶやく。
「毛利って、一途な奴だし」
「……ん?」
「あぁ、わりぃ。こっちの話だ」
「その……もしかして、毛利先輩に、彼氏がいるって話ですか?」
木嶋先輩は、不思議そうに瞬きを繰り返した。
「その、実は前に聞いたことがあるんです。野外学習にて、毛利先輩が彼氏さんを死に追いやった人のことを、すごく怒鳴ったって」
毛利先輩は、美人で優しいし、頭も良くて漢検などで優秀な成績を収め、壇上で賞をもらったこともあるくらいだ。容姿と勉強以外で目立つことはあまりないけれど、この学校で毛利先輩の名前を聞いたことがない人はいないだろうから、あの時の噂はすぐ広まったようで、わたしも耳にしたことはある。
だけど、毛利先輩はみんなにあらわにしていないだけで、ずっと1人で恋人と死に別れたことを苦しんでもがいている、そう思うと関わりが深くないわたしにできることが思いつかなかった。
「そっか、なら話が早いや。な? 俺が毛利の彼氏の代わりなんて、無理なんだよ。彼氏の代わりになれる人間なんかいないから……」
「そう、言われたんですか?」
「いや……そういう訳じゃないけど」
「だったら!」
わたしは無意識に、木嶋先輩の言葉を遮っていた。



