毛利 雫先輩は、わたしの理想を詰め込んだような人だった。
頭がよくて、誰にでも優しくて、ビー玉のような瞳。白い肌に長くて黒い髪の毛。
そして何より、わたしの理想だったのは、圭志先輩のこと。
わたしの好きな人の好きな人は、雫先輩だったのだ。
「わたし、圭志先輩のことが好きです」
冬休みがもうすぐ始まるあの日、ついに言ってしまった。
わたしの心の底にあった、本当の気持ち。
夜寝る時だって、ずっとずっと、わたしを掴んで離さなかったこの気持ちが、ついに先輩の前であらわになってしまった。
「圭志先輩は、どう思っていますか……? お気持ちをお聞きしたいんです」
これって、最初から負けが決まっているようなセリフ。
「……ごめん。俺、直原を彼女にはできねぇや」
ほら、やっぱりと思うと同時に、正常を保っていた恋心がボロボロになっていくのがわかった。
「そう、ですよね……。だって、好きな人いるんでしょう?」
「……え?」
「雫先輩、でしょ?」
「な、なんで……」
圭志先輩、わたしがどれだけあなたを見つめていたと思っているの?
「だって……ずっと好きな人でしたから。それくらい、気付きますよ」
「……そうか、勘付かれてたのか」
結末なんて分かっていたのに、どうして苦しいんだろう。



