「何を考えている」
「先生といつでも相合傘が出来るように鞄の中に準備しているのに、雨が降ってくれないので妄想を膨らませておりました」
「妄想だけで終わるのって、虚しくない?」
「言わないで」
「顔を覆う程ショックだったんだ、どんまい」
思わず顔を覆ってしまった。というか、私達はカレカノではないのだろうか。付き合っているんじゃないのだろうか。これ、本当に付き合っているのか?
カレカノの通学デートって、手を繋いだりいちゃついたりとかじゃないの?
「…………」
――――――――スカッ
「何で手を避けるんですか!! せっかく手を繋ごうと思ったのに!!」
「反射的に」
「反射的に避けるほど嫌だったんですか…………」
「そういう訳ではないんだけど…………」
頭を掻いて、何かを誤魔化そうとしている。もしかして人に触れられるのが嫌だとか? でも、昨日は普通に私掴んでいたし。
「あ、あそこの家。桜が咲いてますよ、綺麗ですね」
「…………予備動作なしで掴むのやめてくれる?」
「あ、え? あ、すいません…………」
「いや、いいけど。少し驚いただけ。確かに、綺麗だね」
咄嗟に掴んだ手を離して、上を見上げる。横目で先生を見てみるけど、かっこいい事を再確認できただけで終わってしまった。
マスクしないでほしいけど、この綺麗な顔を他の人に見せたくない。
まぁ、授業の時とかマスク取って歌っているんだけど…………。
「――――あ」
目が、合ってしまった。
「…………何、もしかして見惚れてた? 俺の顔は整っているみたいだしね。見惚れても仕方がないよ」
「マジそれなんですよ、その顔どうにか出来ませんか? 美しすぎて見惚れてしまいます。何だったら、テレビに出ている芸能人やアイドルより美しいです」
「冗談が通じないタイプだったか――――?」

