…………事故の訳がない。あれが、事故になるのなら、この世で今まで起こってきた事件はほぼ事故になる。殺人事件がなくなるよ、何言ってんだか。
 俺はもう子供じゃない、そんな気休め程度の言葉で考え直すような事はしないし、出来ない。

「…………幸大、お前がなんと思おうが、私達はお前を守り、支えていく」
「余計なお世話だ」
「だが、油断するとお前はすぐに死のうとするだろう。死なせてしまえば、私は娘に顔向けが出来ん。私の為にも、死なないでくれると助かる」
「安心しなよ、それに関してなら。もう、俺はそう簡単に死ねないから」
「どういうことだ?」
「教師失格って事。過去の俺を知っているなら、この意味、分かるよね?」

 俺の言葉に翡翠が驚きで目を開いた。まぁ、察したら驚くよね。正直、ありえないけど。こんな事、あってはならないんだけど。

 俺は、もう人を好きになってはいけないんだけど。でも、感情は抑えられない。抑えれば抑えるほど、この想いは膨らみ、最終的には爆発する。

 "あの時と"同じ事は、繰り返してはいけない。

「…………」
「…………もしかして、君のクラスにいる金糸雀美鈴(かなりあみすず)かい?」
「…………」
「無言は肯定。なるほど、だから一緒にいる事が多いのか。あの時、屋上に居たのもそれなら頷ける」
「あ、気づいていたんだ」
「当たり前です。君の土下座で何も言えなくなっただけです」
「土下座したのに校長に言うなんて…………」
「自業自得です」
「くっ」