――――――――ガシッ
お、腕を掴まれた。
「~~~~~~~ばっかじゃないの!!!!!!!」
「先生、人を捕まえられるほどの握力あったんですね」
「俺を何だと思ってんだよ!!」
先生は咄嗟の行動だったのかな、驚きすぎて今まで聞いた事がないような程大きな声。相当焦ってくれたんだ、そういう所は教師だなぁ。
「これでわかりましたか。私は、貴方の為なら命を捨てれますよ」
「…………はぁぁぁあ、君の本気はわかった。でも、こういう事はもうやめてくれ」
「なら、先生も早く選択肢の中から一つ、選んでください。いえ、もう一つ選択肢を増やしてもいいですよ」
「この状況で何を言ってんの…………」
「最後の選択肢、このまま手を離す」
「…………お前、サイコとか狂ってるとか言われたことないか?」
呆れたように目を細めてる。だって、ここまでしないと、私の本気が伝わらないじゃないですか。ここまでしないと、先生はずっと暗闇を歩き続けているような目を浮かべるじゃないですか。
「選んでください。先生」
「っ。…………はぁ、わかったよ」
「え、わっ!!」
――――――――ポス
先生の温もり、抱きしめられてる? というか、人一人を引き上げるなんて、意外に力強いんだ。
先生の心臓の音が聞こえる、体温を感じる。温かい、心地いい。ずうと、このままでいたいなぁ。
「一応、俺にも教師のプライドはある。生徒は守らないといけない。でも、一生君と一緒なんて無理」
「むっ」
そんなにはっきり言わなくてもいいのに。
「だから、君が卒業するまでなら、付き合ってあげてもいいよ、金糸雀美鈴」
「――――え」
「なんだ、お前が提示した選択肢で一番マシなのはこれだろ」
少し顔を上げると、先生は困った様に眉を顰めながら私を見下ろしてくる。
「そ、それじゃ!! 私は今日から先生の彼女ですね!!」
「そうなるが、なんでそんなに嬉しそうなんだよ」
「嬉しいに決まっているじゃないですか!! ずっと好きだったんです!! そんな人が私の彼氏!! 嬉しくないわけがありません!!」
やった、やった!! 初恋は散って行くものとよく聞くけど、実った。無理やりだけど。
「――――たく、まぁいいわ。これから一年間、おてんば娘の相手、頑張るよ」
「っ、えへへ。これからよろしくお願いしますね!!」
今まで見た事がない表情。先生の、綺麗な笑顔。表情筋が死んでいるのかと思っていたけど、そんな事ないんだ。ちゃんと、笑える人。笑いかけてくれる人。
これから、その笑顔は私のモノ。先生の全ては、私のモノなんだ。

