「ねぇ、いい感じの雰囲気だったと思うんだけど。これ、どういう事?」
「と、咄嗟の判断です」
「お前、俺の事好きなんだよね? キスくらい良くない?」
「なんとなく、体が勝手に動きました」
咄嗟に先生の口元を抑えてしまった。だって、どんどん迫ってくるんだもん。咄嗟に手が動くのも仕方がないよ。
しかも、先生。絶対に止める事しなかったし、私が止めていなかったら、本当にキスしようとしてたじゃん。さすがにそれは、私が駄目な気がしたから…………。
「てか、これって俺。まさか振られたの? え? 君って、俺の事嫌いなの? 好きじゃなかったの? さすがに俺恥ずかしくて今にも死にに行きたい」
「絶対に駄目です。あと、振ったわけではなく、なんか、その。自尊心が働いたというか。さすがに、これ以上は先生の立場が危ないと思って…………」
先生の手が離れたから顔を横にそらして、何とか言い訳を並べる。でも、こんなの言い訳にもなっていないだろうな。
先生、怪しんでいるような目を向けてくるし、怒ってしまっただろうか。どうしよう、これで気持ちが覚めたとか言ったら。
体を差し出した方が、良かったのかな。
…………そうだ、先生が私から居なくなるくらいなら。こんな汚れた体で、いいなら――……
「まぁ、今回はこれで我慢してあげるよ」
「――――え…………」
先生が私の右の手首をやんわりと優しく包み、手のひらにキスをした。
「これから改めてよろしく頼むよ、美鈴」
「っ。は、はい」
先生の、眩しいほどの笑顔に負けて、頷いてしまった。
先生は、本当にずるい。

