君と、世界一の結婚を。

そこで、遠くにいきかけていた意識が戻る。

桜川夕希が、ここに来た理由……。

「それは、世界一の結婚をするためです。」

…えっ。

それは耳を疑うような言葉だった。

い、いや、お金じゃなければ結婚なんだろうな、とは予想ついてたけど。

世界一の結婚、って…。

「僕、さっき言った通り、8人の大家族なんです。だから、かな。人が多いの騒がしいの楽しいし」

「…」

「それに、お父さんとお母さんがすごく仲良しで…。七海夫妻が言っていた、世界一の結婚。あの言葉をよく言っていたんです」

「…」

「"私らは、本当にこの世にないくらい、幸せなの"。"世界一の結婚っていうのは、俺らのことを指すんだろうな"。って」

「…」

「それに憧れて、僕はここに来たんです。…みんなには馬鹿にされるんだけど…。でも、僕は本気なんです。だから」

「私は」

そこで、私は桜川夕希の言葉を遮った。