「…咲花、ずっと、気になってたんだ。…試験前からずっと、いつもの咲花じゃなかった。話したくないだろう、って思ってたから聞かなかった…けど、聞いてもいい?」

近くで、そんな優しい声が聞こえた

呆れればいいのに

…なんで…なんで……

寄り添おうと、してくれるの?

「…私…最初に言ったじゃん…婚約者から逃げるためにこの学園来た、って…」

「うん」

「私、出来損ないだったから…親が決めた…人と結婚する…ことになってたの」

「うん」

「妹たちは違う…自分が決めた人と付き合えて…なのに私だけ、親が決めた人で…」

「うん」

「辛かった…から、この学園に来たの……ここなら、変われるかなって……でも、やっぱりダメみたい…」

「うん」

知らぬ間に、私の視界はぐちゃぐちゃだった

涙が溢れて止まらなかった

出来損ないの私が、こんな我儘、ダメだと思う

思うのに、私はここに来た

そして、パートナーである彼に、夕希に、甘えてる。

ダメ…なのに…ダメ…なのに……