「え……。何?したこと…ないの?」


じゃあ何?

『二回目』って…。

キス?

それであんな声出す?


「母さん…。そういうデリケートなことはあんまり問い詰めない方が…」


眉を寄せ、もう止めようと言わんばかりの表情をするお父さん。


「……したことないもん。…それでいいでしょ」


ぶくっと膨れたまゆりが勢いよく立ち上がり、リビングから出ていった。

響くんもぺこりと頭を下げると、慌ててまゆりの後を追う。


「母さん」


「…何よ…」


静かになったリビングに響く時計の針の音。


「欲求不満なのか?」


こっちを見るお父さんの顔を、右手でぐいっと押し返した。