「そっか…。そういう風にも見えるんだ」


そう言って噛み跡をそっとなぞる。


「っ、ん…」


繊細な手付きに体がびくんと震えた。


「――っ…」


それとほぼ同時に響ちゃんの苦しそうな声。


「どう…したの?」


「まゆに触れたら甘い匂いがしてクラクラする」


「響ちゃ――、やっ…」


私を押そうとする響ちゃんと足が絡まり、背中からベッドに倒れ込んだ。


「ま……ゆ…」


私の顔の両側で手をつき、苦しそうに息をしながら私を見下ろす。

口の隙間から見える尖った歯。

瞳孔(どうこう)が開いて猫みたいになった金色の目。

初めて、吸血鬼だという響ちゃんを怖いと思った。