そう言ってくれたから、私は駆け落ちする約束の日、真冬のローカル線のホームで、ずっと戸倉を待ち続けた。

しかし、いつまで経っても、彼は現れなかった。

やっぱり、こんな滅茶苦茶な話は、いくら優しい戸倉でも嫌だったのだろう。

悲しくて、それでも、来てくれるのではないかと、夜まで待ち続けていたら、警察官に職質され、

「君、もしかして緒方紫さんじゃないか?捜索願が出されてるんだけど、こんなところで何をしている?」

結局、戸倉との駆け落ちも叶わず、家に連れ戻されただけでなく、こんな変な時期に、強制的に東京の高校に転校させられた。

転校先は、いわゆるお嬢様学校で、異性との接触は徹底して禁じられた。

戸倉の住所や電話番号を覚えておけば良かった…否、どのみち彼は駆け落ち当日、来なかったのだ。

二人の恋は、あの日、雪のように消えた…。