運命って、儚いものだ。
授業中、後ろの方の席ということをいいことに、授業も聞かずに今朝の夢の事を考える。
私はあの出会いを運命だと信じて疑わなかった。
私にとって1番古い記憶があの思い出。
なんで名前が分からないのか、分からない。
単に忘れてしまっているだけなのか、何かがあって聞きそびれたのか。
運命だと思ったから、ここに来た。
きっと、きっと再会できるって思っていた。
名前を忘れていても、聞けば絶対思い出すって思っていた。
でももちろんそんなわけなかった。
世の中の何百もの高校がある中でここを選んで運命の出会いを果たすことなんて、きっと宝くじが当たるよりも低い確率。
「え、……百笑、当たってる」
「え?」
楽くんに声をかけられて前を向くと、思いっきり先生と目が合った。
「はいっ!あ、えっと……」
「紗倉さん、ちゃんと授業聞いてください」
結局答えられずに、楽くんが私の代わりに答えてくれた。
ごめん、とジェスチャーをすると、いいよいいよと笑っていた。
入学して何度も見た表情なのに、どこか見覚えのある気がするという、不思議な感覚がした。
「百笑、帰ろ?」
流れに身を任せつつ色々考えを巡らせていたら、肩を叩かれて言われた。
「え、あ、うん」
スマホを見ると、友達の奈子から連絡が入っていた。
「あ、ごめん。中学の友達に遊ばないかって誘われたんだけど……」
今日は断るねと返信しようとしたら、行っておいでと言ってくれる。
「でも……」
「いいじゃん。百笑が学校帰りに遊ぶなんて全然ないじゃん」
それは、違うじゃん。
毎朝色々世話焼いてもらってるんだから、帰ってからは私がって思っているだけ。
「行っといで。息抜きも大事だよ」
それでも迷いが隠せなかった私のスマホを奪った楽くんは、行く!と返信をした。
「なんかあったら連絡してね。飛んでくから」
そう笑って門まで送ってくれた。