彼はそう言うと、私の座る椅子をくるりと回して私を自分の正面に持ってきた。

そして満足そうに目を細め、私の頬に手を置く。

彼の茶色がかった瞳があまりに美しくて私はすっかり彼に見とれてしまっていた。



「思ったとおり。君はとってもきれいだよ」

え…?

きれいって、誰のこと言ってるの?

でもこの部屋にいるのは私とこの男だけ。

だとしたら、それは私のこと?



近くで見る彼の顔は、思っていたよりもうんと美形だった。

年は三十台だろうか。

笑うと目じりが皺っぽくなる。

それがなんとも言えず魅力的だなと感じた。

マンションの向かいから見たときには気づかなかったけれど、どこかで見たことがあるような気がする。

以前会ったことがあるのかしら。

いったい誰なんだろう。