「失礼します」

真っ白い病室の真っ白いベッドの上に麻生マコトは座っていた。

「あの、お見舞いに来ました」



私たちは何を話したらいいかわからず、ただベッドの横に立ち尽くしていた。


麻生くんは、記憶を一部なくしてしまっていたから。


「お母さん、この人たちは?」


麻生くんは傍らに座る女の人の方を不安そうに見つめた。


「マコトのお友達なのよ。マコトは事故で記憶を失ったから忘れてしまったかもしれないけれど」


麻生くんはリサコさんが来たあたりからの記憶をすっぽりと無くしてしまっていた。

だから麻生くんにとっては彼を産んだあと行方不明になっていた本当の母親こそが彼の母親ということになる。

それがここにいる女性だ。