「ねえ、アヤ。昨日の彼さあ…」

起きたばかりだというのに、ランはすぐに彼の話を始めた。

私はちょっとだけ意地悪がしたくなって、こう言った。

「麻生マコトくんはどうしたの? もしかして乗り換えたとか?」

「やだ、アヤ。めずらしいこと言うじゃん」

「そうかなあ」

「そうだよ、アヤがそんなふうに切り返したことなんかなかったよ」

ランはさっきまで私が使っていたグラスにいくぶんぬるくなったミネラルウォーターを注ぎ、ごくりと一口口にふくんだ。

「でもさあ、昨日の彼はやっぱかっこよかったって。そりゃあ麻生マコトくんがかっこいいのは言うまでもないけど」

「ただのおやじじゃん」

そう。

だって彼は私たちよりうんと年上。

別世界の人って感じだった。

「でもさ、大人の魅力があるって思ったんだよね。あんな素敵な人だったらエッチしてもいいかなって思っちゃった」

「え、えっち???」

思わず叫んでしまった。