「連鎖は簡単には断ち切れないんだよ」

RYOさんは胸ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。

そして怒りを静めようとするかのように、深くその煙を吸った。

「マコに流れている血はあの父親のものであるということも、マコがあのとき見てしまったという事実も変えられないんだ。それはずっとマコが背負って行かなくちゃならない」

「でも…」

「アヤちゃんの言うことはきれいごとさ。そんな簡単な言葉で片付けられるようなことじゃないんだ」

努めて冷静に言葉を発していたRYOさんだったけれど、その言葉の奥に今まで私に向けられていた優しさはまったく感じられなくなっていた。

でも、私はRYOさんの言葉に素直に従うことはできない。

麻生くんは確かに不幸な生い立ちをたどったのかもしれないけれど、彼が未来永劫異質な存在であるとは言い切れない。

だって麻生くんの目は澄んでいる。

彼の心のうちを照らしているとしか私には思えない。