【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~

彼の足元には銀色に光る刃が転がっている。

――まさか…?!

頭の中が真っ白になっていた。

最悪の事態が起きたのかもしれない。


私は飛びつくように彼の足元へと駆け寄った。

そしてぴくりとも動かない彼の状況を改めて確認し、その左腕の内側をぐいとこちらに向ける。



「…そ、そんな…」


麻生くんの左腕には血がにじんでいた。

さいわい出血は大したことないようだ。

が、そのあとあらためて左腕を見て愕然とした。



手首から関節に近い部分まで無数のためらい傷が並んでいる。

それは隙間もないほどびっしりとだった。