【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~

「不快に思うことも、ありえないと思うことも、この世の中ではちゃんとした事実で、そこから目をそむけてはいけないって思う。昔さ、大人になればわかるって誰かが言っていた。そんなのずるいって反論したけれど、大人になった今ならわかる。それは事実だってね。起こってしまった出来事は認めなくちゃいけない。そうしなければそれ以上前には進めないのだから」


そんなだったら大人になんかなりたくない。


でも、口に出すことはできなかった。


RYOさんの瞳がまっすぐで、そこに立ち入ることなんかできない。

そう思ったから。



私の知らないRYOさんがここにいる。

触れようとしてもきっと届かない。




私は、彼の胸の中で、彼の心臓の音を子守唄のように聞いていた。