放課後、家に帰ろうと靴を履き替えていると、靴箱の向こうから話し声が聞こえてきた。



「ねえ、聞いた?」

「何が?」



二人の少女のうち、片方はランだった。

私はその会話に釘付けになる。



「麻生くんさ、転校するって噂だよ」

「ふうん」

「ふうんて、ラン、驚かないの?」



会話の相手の声はひっくりかえりそうな勢いだった。

それでもランは、言葉一つ乱すことなくこう答えた。



「驚くってどうして? このままじゃ出席日数足りなくなるし、転校するのもありだよ」