【完】大人の世界~甘美な毒に魅せられて~

結局ランは泊まっていくことになった。

「明日は土曜日だし」とうちの両親に引き止められて。



「なんかいいね、アヤの家族って」

「そう?」

「うち三人じゃん。パパもママも仕事で帰り遅いし、会話する暇もないよ」


クローゼットから引っ張り出した布団を二人で敷く。

シーツの四隅をきゅっと引っ張り、ふわりと手を離す。

空気を含んだシーツは皺一つなく、敷布団の上に舞い降りる。



「なんか難しいな」

「何が?」

「だって、私はちゃんと話せる家族がいるのに、ちっともうまく喋れない。ランみたいに話せたらいいのにって心の中では思ってるんだけどさ」





本当だよ。

さっきの夕食の席で、私はランがうらやましくてしょうがなかった。

だって私がいたって話が盛り上がるどころか、盛り下がるばかり。

悟の言うことも一理ある。

もっときれいで明るいお姉ちゃんだったら、悟だってきっと嬉しいに違いない。

そう、ランみたいに。