「そうね!」

やっとランの顔に笑みがこぼれた。

よかった。

私はランを失いたくない。

これでいい。

あとは麻生くんに会ってこの前の返事をするだけ。



――私は麻生君とは付き合えないって。



無邪気に腕を絡ませるランに安堵しながらも、心のどこかで割り切れないよどんだ思いを感じていた。

それでも自分に言い聞かせる。



――何もない。私の気持ちにはなんにも。

麻生くんに惹かれているなんて思ったのは気のせいだったの。

だって何も始まってもいない。

だから大丈夫。

なんともないわ。