「い、いません」



私は嘘をついた。

本当は…麻生君に聞かれて真っ先に頭に浮かんだのはRYOさんだった。

でも、それを認めてしまうのがなんだか怖くて…。



それに、彼の指先の感覚がまた蘇ってきて、それが私を混乱させた。




「沢木さん…?」

気がつくと、麻生くんが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

「あ…」

「大丈夫? なんだか泣いちゃいそうな顔してたから」



麻生くんの言葉でようやく自分自身を取り戻した。


「ごめんね、私最近いろんなことがあってね、なんか自分でもよくわからなくなっちゃってるんだ」