「さてと…じゃあ私事務所に顔出してくるから。ごゆっくりね~」

麻生くんのお母さんは美しい笑顔を惜しげもなく私に向けながらドアを閉めた。

私はぺこぺこするだけで精一杯で…。

麻生君はお母さんに手渡されたトレイをテーブルの上に置き、私の前にケーキを置いた。

「たぶん、どんな子連れてきたのか見に来たんだよ」

紅茶のいい香りが立ち込める。

なんか高級な匂い。

「ま、食べようか」

手馴れた感じで麻生君はポットの紅茶をティーカップに注ぐ。

そんなしぐさの一つ一つが絵になっていて、私はすっかり見とれてしまっていた。