純・情・愛・人

寝入ってしまった広くんの代わりに玄関で彼を送る。ドアハンドルに手を掛けた朝倉君が、思い出したように振り返って言った。

「コウキの親父や兄貴が大事なモンと、園部の大事なモンは違ェぞ。どーするよ?」

口角を上げ、横目が流れる。意味を問う間もなく、片手をひらりと振ってドアの向こうに消えた背中。

どうする、と投げかけられた疑問は、遠くない未来にその答えを出さなくちゃいけない気もした。

朝倉君はこれからも岸川の人で、彼女の味方。でも会うたび意地悪に見せかけて、つまづきそうな石を気付かせてくれていた。気がする。

今は自分の足先に転がっているものが何なのかすら。例えば、二つにひとつを選べと迫られても、逃げずに向き合えるように。勇気を蓄えておこう。お腹の底できゅっと紐を結び直した。

リビングに戻るとソファの脇に立ち、広くんを起こそうか、鼻筋の通った寝顔を見下ろす。

真珠色のネクタイの結び目が雑に緩み、乱れたシャツの襟元。身長は宗ちゃんとそれほど変わらなくても、肩幅は広くんの方がありそう。

普段はしないお酒と煙草のきつい匂いがした。宗ちゃんも広くんも、わたしの前で絶対に吸わない。そう努力してくれていたのを当たり前に受け取っていた。知らずにいることが他にももっと、あったんだろう。

「・・・・・・たくさん、ありがとう」

耳の近くにかがみ込んで、小さく呟く。

「ごめんね、・・・広くん」