純・情・愛・人

電話から一時間もしないうち、玄関の鍵が開く音と話し声が聞こえて廊下に出ると、朝倉君に肩を借りた広くんの姿があった。

「っす、邪魔してるわ。酔っ払いはどこに転がすよ?」

「・・・酔ってねぇよバーカ」

「へーへー」

「じゃあこっち」

揃って黒いスーツの二人をリビングに招き入れ、広くんが仰向けで豪快にソファに寝転んだのを、朝倉君は首が凝った仕草を見せる。

「ずっと飲みっぱで、そのまま泊まりゃいーのに。帰るってきかねーの、このお坊ちゃんはよ」

芝居がかった溜息を漏らして、リビングを大きく見回す朝倉君。砕けた格好じゃないのは、そう言えば初めてだ。

「園部っぽいっつか、極道の愛人(オンナ)の家っぽくねーよな」

「・・・褒めてる?」

「ま、だから宗吾さんも気楽なんだろ。帰ってもヤクザだらけとか萎えねー?」

茶化しているようで、やっぱり彼は本質を見抜ける人。無意味な意地悪は言わない人。

「オレは誰が誰の愛人だろーが、どーこー言う気ねーのよ。園部にちょっかい出して、番犬《コウ》に噛み付かれんのもカンベンだしなぁ。デキちまったもんはしょーがねぇし、とりあえず無事に産んどけよ?」

「うん、・・・ありがとう。広くんにはすごく助けてもらって、わたしも安心してる」

当人は寝てしまったのか寝たふりか。本当は面と向かって伝えられればよかった。

「おー?コウの好感度、上がってね?」

ニンマリ朝倉君にからかわれた。普通に意地悪だと思う、今のは。