おろしうどんにレバニラ炒め、ワカメがたっぷり乗った冷や奴。普段ほどは食べられなかったけど、ご飯がこんなに美味しいと感じられたのは久しぶりな気がした。

後片付けを引き受けて居間に戻ると、寝転んでテレビを観ていたお父さんが「よっこいせ」と体を起こし、胡座を掻いた。

「あのなカオル」

何となく改まった物言いに、座卓を挟んで神妙に腰を下ろす。

実家暮らしを卒業した途端、自己管理がままならないなんて。娘として情けないし、叱られて当たり前だ。

「明日、病院に行ってみようや」

思わず固まった。

「・・・病院?」

もしかして悪い病気にでもかかっていたのかと顔色が無くなる。お父さんをひとり残して死ねないとか、怒濤のように思いが駆け巡り。

「オメデタらしいからよ?」

「え・・・・・・?」

呼吸を忘れた。
おめでたって。
それって。

「赤ちゃん、できた、の・・・?」

「宗にはまだ言ってねーからオレが連れてく。ちゃんと診てもらえや」

目尻を下げどことなく困ったように、感慨深そうに、鼻の下をこする仕草。

「オレもとうとうジジィかよ」