純・情・愛・人

お昼は食欲が湧かずに、ふたつ作ったおにぎりをひとつ残した。深町さんも欠かさずお弁当持参で、料理の得意な同居人が作ってくれるんだとか。おかずがぎっしり詰まっていて、いつも感心する。

『あたしが男だったらヨメにもらうんだけどね』

さばけた彼女の口癖だ。

午後は、設備の不具合や衛生管理を確認するための定期巡回だった。特に休憩室のゴミの分別は、注意書きを何度張り替えてもきちんと守ってもらえない。迷惑顔の回収業者に頭を下げるのが、総務課なのはわりと理不尽だと思う。

朝からずっと重怠さが抜けないのを堪え、部署ごとに聞き取りもしながら深町さんとふたりで社内を回る。三時休憩をはさみ、備品倉庫の在庫確認で終了だ。

「ハンドソープと消毒液は残り2です、発注ですね」

わたしがケースの中身を数え、チェック表を手にした彼女に伝えていく。

「次は・・・」

かがんでいたのを、顔を上げて立ち上がろうとした瞬間。ふいに眩んでよろけた。どうしてか力の入らない膝が折れ、ぐにゃりと体が崩れ落ちる。

「ソノちゃんッ?!」

深町さんの声が聞こえた。聞こえているのに、頭の芯が痺れて目が開けられない、返事もできない。

「誰かぁ・・・ッ、救急車!!」

彼女が遠くで叫んでいる。動けないまま、すうっと上から何かが引いていく感じがして。

そのあとは憶えていない。