純・情・愛・人

唐突だったから、何に対してなのかを計りあぐねた。もしかしたら、わたしを気遣ってくれただけで、他意はなかったのかもしれない。

広くんを連想してしまったのも、さらに彼女へ繋げてしまったのも。無意識だった。

「琴音さんは違うの・・・?」

零れたそれに、自分が一番驚いていた。考えてもどうしようもないから、箱詰めにして隅に追いやっているのに。毎日、上からテープを張り直してるのに。

責めたように聞こえただろうか、妬んで聞こえただろうか。わたしには何も言う権利がないのに・・・!

一瞬、目を(みは)った宗ちゃんが口を開く前に、踵を返した。「ごめんなさい」を投げつけて逃げた。

会社に向かいながら、自己嫌悪で胃がねじ切れそうだった。『あんなこと言うつもりじゃなかった』。頭の中で再生し続けた。

「ソノちゃん寝不足?」

短い朝礼が終わり、席に戻ると右隣りの深町さんに顔を覗きこまれた。

四月から部署の異動で総務課に配属された彼女は一学年上で、気安くお昼を一緒に食べるくらいには打ち解けていた。

「おつかれだね」

「ちょっと夜更かししちゃって」

あれこれ詮索しない深町さんが、軽く流してパソコンの画面に向き直ったのを、わたしもキーボードを叩き始める。とにかく帰ったら電話して謝らなくちゃ。

瞼の裏で宗ちゃんの背中に手を伸ばすけど。届きそうで、・・・届かない。