純・情・愛・人

今まで我慢していると思ったことは一度もなかった。

会いたい時に会えないことも、行きたい場所に自由に出かけられないことも、わたしと宗ちゃんは普通と違うんだと納得していた。寂しくなかったわけじゃないけど、充分すぎるくらい愛されてたから。

そう、真っ直ぐ言い返せばいいだけだった。喉につかえて出てこなかった。

沖縄行きを黙っていた宗ちゃんが、過去形で打ち明けてくれたとして。わたしはどんな表情をすればいい?

泣けない。怒れない。嫉妬できない。・・・笑わなくちゃ。平気なフリをしなくちゃ。

自分を殺さないと先に進めないことを思い知った昨日。苦しさを紛らわせたくて映画に出かけたのに。広くんがぜんぶ台無しにする。

「・・・・・・わたしのことは放っといて」

顔が歪んだ。首を捩り、顎にかかる指先から逃れようとして次の瞬間。きつく抱きすくめられていた。

「はな、して・・・っ」

「俺の女になれ、薫子」

耳許で聞こえた強い声。抵抗しようと思っても、後ろ頭を押さえ込まれ、腕の中に捕らえられて身動きできない。

「琴音はオフクロの気に入りだ。兄貴が意地張ろうが、親父もいつまでお前の肩は持てねぇよ。甘くねぇぞ、岸川の伯父貴だってな。どうせ泣かされるなら俺に泣かされろ」