純・情・愛・人

すると会話を拾っていたのか、隣りの男性が退いていなくなり、遠慮なく広くんはそこに腰を下ろした。

「・・・うん。でも酔い止めは眠くなって運転できなくなるから、お水だけ・・・」

10分くらい戻らなかったのは、買い物途中だったんだろうと思っていた。他人にお構いなしの俺様じゃないから困る。血も涙もない冷徹人間じゃないから困る。

「いいから寝ぼけてろ。俺が送る、キー貸せ」

ペットボトルのキャップを捩ろうとして思わず固まる。すかさず隣りから横取りされ、頭をねじ切ったボトルがまた掌に戻った。

「そのうち良くなるし平気・・・。広くんにそこまでしてもらわなくても」

「聞こえねぇな」

にべもなかった。だけど。ただの弟じゃなくなって、素直に甘えていいのか距離の置き方に惑った。

「俺を見くびってんのか?弱ってる女を泣かす趣味はねぇよ」

見透かしたような口ぶりは、歳上だっていう唯一の武器を簡単に折られた気がした。小さく息を吐く。本当は心細さが薄らいだ、広くんだと分かった途端。

「・・・・・・じゃあ頼んでいい?」

「始めからそう言え」

朝倉君が言った『手加減しないでブチのめせ』は。差し伸べてくれた手を払いのけるのと違う。・・・と思うの。